榊銃士浪
オープニング
ナコルルの登場
五人目
ナコルルの導き(朧衆戦前)
ナコルルの導き(朧衆戦後)
九人目
ボス戦
エンディング
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城下の外堀にかかる架け橋の上で、二人の侍がすれ違おうとしていた。
「行けば死ぬぞ」
「十四郎、オヌシが守ってくれるではないか」
すれ違いざまの言葉を残し、互い方向へと歩いていく。
それから半刻後、その答えは出た。
「まて! 死ぬな!! …………」
「これでよい……私は……本望だ……十四郎……十四郎……」
(なぜだ?! なんの意味がある! 何の為に死ぬ……)
女は、うなされている男を揺り起こしていた。
男が悪夢から醒めて、その視線の先におぼろげに見る女の顔……美しい青い瞳。
「……銃士浪、大丈夫なの? ……なによ? 私が天女にでも見えた」
「……すまん。只なんとなく、昔の知り合いに似てたんでね」
「あら、じゃあ飛び切りのイイ女ね」
「悪いがそいつは、かたぶつの侍だ」
と木陰から起き上がり歩き出す。
「なっ! ……待って、て事は……男! ちょっと何処行くのよ?」
問い掛けるサヤに振り向くことなく銃士浪がいう。
「立ち止まっちゃいられねぇんだよ、オレは」
飄々とした後ろ姿を見せたまま、銃士浪は木漏れ日の中へ消えていく。
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ナコルル「お願い……。助けて、暗黒の闇が……。黒い力が……。破壊が……来るの……。
どうか……。あなたの……力で……。邪悪な力を……止めて……下さい。覇業三刃衆を……」
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灰人「………」
銃士浪「んっ? 何だ、なんか用かい」
灰人「オメエよぅ、なんであんな女とつるんでんだよ」
銃士浪「女……。あぁサヤの事か」
灰人「なんでか、聞いてんだよっ!!」
銃士浪「ん〜っ。まぁ〜単なる成り行きだな」
灰人「成り行きだと」
銃士浪「オマエ?! もしかしてホレたのか、サヤに?」
灰人「んだと、コラッ」
銃士浪「まぁそうカッカすんなよ。冗談だ、すまん」
灰人「イラツクゼッ、オメーといい、あの女といい」
銃士浪「何かアブナイなぁ、オマエ」
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ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
今、あなたの目指している人は、恐ろしい人達の仲間。その人達の名前は、覇業三刃衆。
邪悪な意志を継ぐ恐ろしい人達……。二十年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
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「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
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蒼志狼「………」
銃士浪「……んっ!! ……オマエ、どっかで?」
蒼志狼「逃げ出しても、刀は捨てられなかったようだな」
銃士浪「!!!!! そうか、あん時のチビか!」
蒼志狼「無駄口は、終わりだ」
銃士浪「はっはっは、相変わらずかわいげがねえガキだぜ」
蒼志狼「悪いが斬らせてもらうぞ」
銃士浪「悪いなら、斬るなよ」
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銃士浪「ずいぶん探したぜ」
朧「ヌシ如き若造が、天に挑むつもりか」
銃士浪「七年前……オマエ達が殺した侍達の死に様……ヤツらは何の為に散っていったか、どうしても答えが聞きたくってな」
朧「七年前? そのような蟻のような事、記憶にも残らんわ」
銃士浪「アリ、だと」
朧「そうよ。高く堅固な城を築くのに、蟻の数など数えておれんというたのよ」
銃士浪「…………」
朧「弱く、無知な者共の時代は終わる。強く気高い者のみ生き残れる時代が来るのじゃ。
クックック、その獣の目。……ヌシもその時を強者として、生き抜いてみたらどうじゃ」
銃士浪「…………」
朧「すべては、あのお方のおられる、この場所から始まるのじゃ」
銃士浪「…………」
朧「今の世に背を向けたヌシのこと、少しは買うておるのだぞ」
銃士浪「……匂うぜ」
朧「何じゃと!!」
銃士浪「この腐りきった城が、屍の上に築いたオマエ達の楽園か」
朧「ぬかせや、小僧!! ヌシ如き若造が、あのお方の苦痛と悲しみが分かるか!!」
銃士浪「……分かるかよ……」
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(回想シーン。侍時代の銃士浪=龍巳十四郎がお庭番衆
の同士・榊嘩蓮を呼び止める)
十四郎「姫の影武者、引き受けたそうだな」
嘩蓮「それがどうかしたか?」
十四郎「何故だ!!」
嘩蓮「何故? 主君の盾となりその身を守る。それが侍の務め」
十四郎「…………。行けば死ぬぞ」
嘩蓮「十四郎……お主が守ってくれるではないか」
十四郎「待てっ!! 死ぬな嘩蓮!!」
(姫の姿をし倒れた嘩蓮を抱き上げる十四郎)
嘩蓮「これで良い……私は本望だ、十四郎……。女としてではなく……同じ侍として、お前の胸で死ねるのだから……」
銃士浪「自らの命を捨ててまで……この世は守る価値があるのか……嘩蓮」
(夕暮れの草原で、銃士浪の背後に花房迅衛門が立つ)
迅衛門「榊、嘩蓮……忘れられんようじゃのう」
銃士浪「……迅衛門か」
迅衛門「おまえが幕府を敵に回してまで背負った痛み、まだ消えぬか、龍巳十四郎」
銃士浪「消し去りたいが、その術(すべ)がまだ見つからないんでね」
迅衛門「……おまえが、ワシらの前から姿を消した後……幕府より命が下った。龍巳十四郎……おまえを討ち取れと。
できれば出会わずに……友として、一生を終えたかったぞ」
(互いに構える両者)
銃士浪「どうしても、やるのか?」
迅衛門「ワシも嘩蓮も、同じ侍じゃ。侍とは主君を守る為に死ぬ。そして、主君は民衆を守る為に生きる」
銃士浪「なあ、迅衛門よ。もし侍が必要の無い時代に生まれ変われたら、もう一度酒を酌み交わそうぜ」
迅衛門「あぁ、約束だぞ」
銃士浪「その為に、オレはオマエを斬る!!」
迅衛門「その時代を築く為にワシもおまえを倒す!!」
銃士浪「……」
迅衛門「……」
(相対する両者)
銃士浪「セイヤッ!!」
迅衛門「ドリャッ!!」
銃士浪「……」
迅衛門「…………。……グッウゥゥッ」
(崩れ落ちる迅衛門、背を向け立ち去る銃士浪)
銃士浪「すまねえな、迅衛門。立ち止まっちゃいられねえんだよ、オレは」
迅衛門「ワシは、もうおまえを追わぬ……。だが聞け。いくら名を変えようと、幕府は、おまえを追い続けるだろう。
行けい、十四郎!! 約束の……時代の為に! …………」
(刀を収め前を向く銃士浪)
銃士浪「オレの名は榊、銃士浪だ」
龍巳十四郎(榊銃士浪の旧名)・花房迅衛門・榊嘩蓮は、九葵武尊守鉄騎(くき・たけるのかみ・てっき。蒼志狼の実父兼刀馬の養父)に率いられた先代御庭番衆のメンバー。
先代御庭番衆の設定画は、『甦りし蒼紅の刃公式ガイドブック』(講談社)P136で公開されている。