黒河内夢路 物語りまとめ
※初登場作はこの色
※続投作品はこの色
無色は出場していない作品
リリース順 | 作品全体の物語 | 時系列 | キャラクター別物語 |
サムライスピリッツ(初代) | 暗黒神アンブロジァによって復活した天草四郎時貞の怨霊が引き起こした異変を鎮めるべく、十二人の剣士が島原へ向かう。 | サムライスピリッツ零 | 武道の名門神夢想一刀流(橘右京の流派でもある)の跡取りとして生まれた黒河内夢路は剣術に天賦の才を見せていたが15歳の時、”生まれつきの身体的な問題”により家を追われた。 人と接する事を拒み生きてきた夢路だが、兇國日輪守我旺との出会いにより己の進むべき道を見つけ、我旺の右腕的存在となった。 日本全国を巡り、我旺の力となるますらおを捜し求めているが、夢路の目にかなうますらおと出逢える事は滅多にない。 〔PS2ソフト版〕 ストーリーモード冒頭、右京が夢路の母(黒河内雪路)と対面している。 我旺の為にますらおを捜し求める夢路の前に、もう一人の夢路が現れる。戻った夢路に我旺はこの場を去って生きろと告げる。押し問答の果てに我旺は闇キ皇と化した。 独り残され嘆く夢路の前に右京が現れる。(右京のエンディングに続くと思われる) その後冒頭のシーンに戻り、右京は夢路の母に夢路の言葉を継げた。母は「たとえ死に目にすら会えなくても、あなたを子に持てた事を生涯の誇りにします」と伝えてくださいと返す。 母の元から去り、右京に変化していた夢路は幻術を解き母に別れを告げた。 〔公式小説『黄泉の黎明』〕 ひたすら我旺の為に剣を振るい、柳生十兵衛や旧知の右京とすら相対する夢路だが、黄泉ヶ原の乱の最中我旺の異変を感じ急ぎ駆けつける。 我旺は魔界の闇キ皇を(劉雲飛と共に)撃破したものの、夢路に「笑って生きよ」と言い残して次元の裂け目に飲まれていった。 |
真サムライスピリッツ | アンブロジァに仕える魔界の巫女・羅将神ミヅキが甦った。十五人の剣士たちが、ミヅキの本拠地恐山へと向かう。 | 天下一剣客伝 | 行きずりながら娘を攫った山賊たちを斬り、娘を家に送り届けた夢路。家を追われた過去を想い、剣に費やしたこれまでの生を想い、夢路は御前試合への参加を決意した。 四回戦で、零エンディングで斬首(斬り捨て)したはずの魔界のもの・羅刹丸が夢路の前に現れるが夢路はあっさりと彼を退ける。 御前試合の相手は橘右京。 唯一の友にして好敵手に見事勝利した夢路だが エンディングで、御前試合で優勝し天下無双の称号を得ても心は晴れず、右京の励ましでようやく慰められる。 歩むべき道を剣が示してくれることを信じて、右京と別れた夢路のその後の消息は知れない。 時折、右京の元に手紙が届いたが最後の手紙は右京から両親へと渡された。 「右京殿、世界はこんなにも広く、美しい。 自分の足で歩むことの何と素敵なこと。 父から授かったこの剣、 母から授かったこの命、 剣の道を今も、昔も、これからも、歩み続ける自分自身を、素直に誇れます。 私は、幸せです。」 |
斬紅郎無双剣 | 「鬼」と呼ばれる無情にして強力の剣士・壬生月斬紅郎を斃すため、十二人の剣士が立ち上がる。 | サムライスピリッツ(初代) | 登場なし |
天草降臨 | 天草四郎時貞が光(善)と闇(悪)に分裂し、闇の天草は島原に魔城を建立。十七人の剣士たちが島原へと向かう。 | 斬紅郎無双剣 | 登場なし |
侍魂(64) | 人形師に身をやつす魔界のもの・壊帝ユガが復活。十一人の剣士たちがユガの元へと向かう。 | 天草降臨 | 登場なし |
アスラ斬魔伝 | ユガの敵対者である魔界のもの・アスラが地上へ現われる。壊帝も再生し、十三人の剣士たちはユガを葬るため立ち上がる。 | 真サムライスピリッツ | 登場なし |
甦りし蒼紅の刃 | 二十年後。江戸近海の小島に存在する「離天京」を支配する覇業三刃衆を倒すべく、様々な立場の剣士たちが三刃衆の居城「天幻城」へと向かう。 | 侍魂(64) | 登場なし |
サムライスピリッツ零 | 初代の二年前。幕府に反旗を翻した武将・兇國日輪守我旺は魔界のもの”闇キ皇”にとり憑かれた。引き起こされる異変を鎮めるべく、二十四人の剣士たちが戦の場・黄泉ヶ原へと向かう。 | アスラ斬魔伝 | 登場なし |
天下一剣客伝 | 本編の時間軸とは関係しないパラレルストーリーであり、エンディングは基本的に登場キャラクターの望みを叶えたものとなっている。 枠組みとしては、零の主人公徳川慶寅が主催する御前試合に四十一人の剣客たちが集うとなっている。 |
サムライスピリッツ閃 | 登場なし |
サムライスピリッツ閃 | アスラ斬魔伝の結末の幾つかを無効にした翌年の出来事。 レスフィーア王国出身の軍人ゴルバが、祖国の再建のため日本は天降藩の鈴姫と前国王の形見のバスタードソードを狙って日本に刺客を差し向ける。ゴルバの陰謀に巻き込まれた剣士たちは彼の居城を目指す。 |
甦りし蒼紅の刃 | 登場なし |
◆概要
黒河内夢路は、SNKプレイモアリリース(製作・悠紀エンタープライズ)作品である『サムライスピリッツ零』(以下、主に零を用いる)に中ボスとして初登場した。
そして続く『天下一剣客伝』(以下、主に剣サムを用いる)でもプレイアブルキャラクターとして続投している。
夢路(と、同じく中ボスとして登場した萬三九六)は、サムライスピリッツ(以下サムスピ)の2Dゲームでは初めての
”ストーリーモードでラストボス(零では兇國日輪守我旺)と関係のある中ボス”であり、※1
そしてサムスピの旧キャラ(レギュラーキャラ)である橘右京と、設定上深い関係を持っているという
零では唯一無二の新キャラでもあった。※2
夢路は橘右京と流派(神夢想一刀流)を同じくする剣士であり、友人でもある。
同時に右京の剣術の師である黒河内左近の子供で跡取りと目されている存在だったが、十五歳の時父親に勘当され出奔したという。
右京の零公式ストーリーでは、夢路の出奔の場に立ち会った右京は
黒河内左近の夢路への罵声と必死に止めに入る母雪路の声を聞き、精気を失った夢路の姿を目にしている。
勘当の理由を右京は偶然に知り、剣の道を究めるには全くの些事と思うのだが、
家を重んじる師匠の左近にとってはそうではないこともまた理解していた。
この理由……夢路の設定によれば「生まれつきの身体的な理由」が何であるかは、後ほど考察する。
(◆夢路の性別についての考察の項を参照のこと)
そして生家を追われて全てを失った夢路は兇國日輪守我旺と出会い、※3
零に登場したときは腹心として我旺の謀反に同調・協力する腕の立つ者を探し諸国を巡っていたが
零のラストで我旺は闇キ皇討伐のために命を落とす。
(我旺の最期はゲーム中ではっきりと描かれていないが、公式小説『黄泉の黎明』では闇キ皇諸共魔界へ堕ちたかのように描写されている)
再び拠り所を失った夢路だが、ゲーム中の右京エンディングでは右京によって断髪されその励ましを受ける。
そして「一年後」(と、ゲーム中では表記されている)頭巾をつけた夢路は
覇王丸を殺害しようと付け狙っていた魔界の存在・羅刹丸の前に現れ、その首を斬り落とし去っていった。
(なおこの斬首描写はアーケード版のものであり、PSソフト版『サムライスピリッツ零』では修正されている)
しかし羅刹丸はそれでもなお死なず、続く剣サムで四回戦の相手として夢路の前に現れるのである。
両者の激突については、◆夢路のその後についての考察の項を参照のこと。
◆関連キャラクター
同門(兄弟弟子?)の間柄にして友人でもある橘右京。
(公式小説『黄泉の黎明』では、自身の出奔を"止めてくれなかった"右京に対し悲嘆の思いを向けている。
恋情とまで言えるかは不明だが、"何かに依存することで精神を支えている"夢路にとって依存の対象となりかけていたのではないか、と思わせる描写である)
家族構成は父の黒河内左近、母の黒河内雪路。
父には罵倒の末に勘当され、対照的に母は常に夢路を案じていたが、
剣サムエンディングのラストで、夢路は両親に対して生き方と命を授けてもらったことに感謝を述べている。
夢路が絶対の忠誠を誓った主君が兇國日輪守我旺。
その我旺が幕府に反旗を翻した際の同士が萬三九六だが、
剣サムの三九六ストーリーモード・御前試合で対峙した際、夢路は「そもそも私と貴方は水と油。相容れる訳もありますまい」と言い放っている。
(三九六の剣サムエンディングは夢オチではあるが、夢路がこう思っているのは間違いないだろう(笑))
柳生十兵衛とは公式小説『黄泉の黎明』では剣を交えており、剣サムではそれを踏まえたCPU登場台詞が十兵衛にある。
覇王丸を殺害しようと付け狙う魔界の存在・羅刹丸は零のエンディングで一度夢路に倒されており、剣サムでも再び夢路の前に現れる。
また、零では隠しキャラクターとしてガルフォードの愛犬(忍犬)のパピー(初代)が登場するが
夢路は犬のパピーに対しては戸惑いと情のある所を見せており、零スタッフのコメントでも"(夢路は)普通に犬と会話できる"とされている。
剣サムのCPU夢路には、動物たち(チャンプル・ママハハ&シクルゥ・パクパク)に対し専用登場台詞がある。
なお、チャムチャムに対してもCPU登場台詞があり、夢路は彼女に"バナナン"の事を尋ねられて困っている。
◆夢路の性別についての考察
黒河内夢路は一見したところ女性的な容姿で線も細く、零・剣での担当声優も一貫して女性(斎賀みつき)である。
しかしゲーム本編・公式小説共に女性と明言されたことは一度もなく、
零がリリースされた当時、ファンの間で夢路の性別についてはよく話題となっていた。
零スタッフのコメントでは「皆さんの想像通りと言っておきましょう(笑)」とあったが
零に続く剣サムでは、夢路の性別を推測する新たな手がかりとなる要素がいくつか散りばめられている。
最初の手掛かりは、一応元の同士である萬三九六が夢路に投げかける台詞である。
三九六は中ボスだった零時代、プレイアブルキャラクターに対し男性キャラなら「ぶっ殺してやる!」と息巻き
(緋雨閑丸にのみ、部下にならないかと誘いをかける)
女性キャラなら「売り飛ばす(シャルロット・ナコルルには「高く売れるぜぇ!」リムルルには「二束三文だな」)」
または「痛めつけてやる(真鏡名ミナ・レラ)」と下卑た台詞を吐いていたが
剣サムの自身のストーリーモードでは御前試合の相手として登場する夢路に対し
「ブッ殺してから売り飛ばーすッ!!」と言っている。
つまりは、男性にかける言葉・女性にかける言葉両方を続けて放っているわけである。
次に、剣サムの新規キャラ・米国零代大統領アンドリューのCPU登場台詞である。
彼は女性キャラクターに対し様々な専用台詞を持っているが、夢路に対してはそれがない。
まとめると、
剣サムで初めて夢路に会った・つまり夢路について面識も知識もまるでないだろうアンドリューは女性と見ていない、
一方、かつて一応は同士だった分、多少の付き合いはあっただろう三九六は男女両方と見ている、と判断できるのだが
それはどういうことになるのだろうか?
アンドリューにとって帯刀している夢路は、格好からして日本のサムライ=男性と判断でき
三九六は夢路の腕前は男性的・立ち振る舞いは女性的と判断していたから?と考えることもできるが
零時代、ファンの間で主流を占めていた夢路の性別に関する意見……女性が男装している……に対して
・身体的に男女両方の特徴を持つ、または生誕時男性だったが成長につれて肉体に女性的な特徴が出てきた=両性具有者(擬似半陰陽)
・性同一性障害(肉体の性と当人の認識にズレが生じ、一致していないと当人が感じている)
という可能性も出てくるわけである。
夢路が勘当された理由は”生まれつきの身体的な問題”に由来しているらしい点からすると
精神的な性同一性障害よりは、肉体的な両性具有者(擬似半陰陽)の可能性の方が高いだろうか。
上記の可能性のいずれを取っても、おそらく厳格(かつ頑固)な武士である夢路の父黒河内左近にとって、
到底受け入れられない存在だっただろうことは想像に難くない。
(右京の公式ストーリーで左近は夢路に対し、当人が出て行った後も「殺してやる」「死んでしまえ」「黒河内の恥晒し」
「お前のような下衆に家督は継がせぬ」と口を極めて罵っている。)※4
夢路の”好みのタイプ”は”すべてを受け入れてくれる包容力のある人物”となっているが、
夢路が絶対の忠誠心を抱いた我旺が夢路の”生まれつきの身体的な問題”を知っていたのかどうか、気になるところである。
(公式小説・ゲーム本編ともに一切言及のない謎の要素である)
◆夢路のその後についての考察
筆者(管理人)は真鏡名ミナの物語まとめにおいて
パラレルワールドとされている『天下一剣客伝』は、実は『サムライスピリッツ零』の翌年を舞台にした続編である可能性を検証したのだが
黒河内夢路も、ミナや首斬り破沙羅と同様に零と剣でストーリーが繋がっているキャラクターの一人、と判断している。
(ただ、ミナと破沙羅はゲーム上のストーリーがきちんと繋がっているのに対して
夢路は零のアーケード上のストーリー・零の移植ソフトの追加ストーリーと、シナリオライターによって執筆された公式小説でストーリーに若干の齟齬が生じているが)※5
零で心を傷つけながら我旺のために戦い、そして剣サムで迷いを抱きつつ剣と共に生きる己を見出した夢路は
剣サムのエンディング終盤で行方知れずとなり、友人の右京の元に届いた最後の手紙が両親に託された、と語られる。
世界の素晴らしさを友に語り、両親に感謝の言葉を述べ、剣の道を歩む自身を誇り幸せだと胸を張りながらも
(つまり、かつては何かに依存する事で精神を支える状態だった夢路は、旅路の中でそこを脱して独り立ちを果たしたと言えるだろう)
この後、二度とサムスピの舞台に姿を現さなかった夢路はいずこへ消えていったのだろうか。
ところで、夢路の父である黒河内左近がサムスピに(名前すら明かされない設定のみとはいえ)初登場したのは第三作『斬紅郎無双剣』(以下斬サム)でのことである。
(零での左近の”元ネタ”である右京の師の初出は厳密には『真サムライスピリッツ』の謎本だが、
ゲーム本編の設定ではないためとりあえず除外とする)
ここで左近という名は出てこないが、”橘右京の師”(後の零での夢路の父)は「鬼」壬無月斬紅郎によって
神夢想一刀流の道場で門下生ともども斬殺されており
右京は師と仲間の仇討ちのために斬紅郎を追うのだが、ここにひとつの疑問が生じる。
何故、夢路は父の仇である斬紅郎を追うことをしなかったのだろうか。
現実問題としては、斬サム(1995年リリース)時代には零(2003年リリース)に登場した夢路は存在していなかったので、当然追える訳がないのだが(笑)
現実問題としてではなく、ストーリーの時系列上で考えてみると
夢路に父の仇を追えない何らかの事情があった……と考えるほかはない。
(自身を勘当した父を恨み仇討ちをするつもりもなかった、という推測もできなくはないが
親の仇討ちが絶対の掟である江戸時代の帯刀する侍として、
また剣サムエンディングの手紙の中で父母に感謝を述べている事実からしても、まずありえないと断言できる)
ここで思い出されるのが、零のエンディングで夢路に一度は斬首された(PSソフト版ではこの描写は修正)羅刹丸の存在である。
羅刹丸は天草四郎時貞の気まぐれによって生み出された(剣サムの羅刹丸ストーリーモードで言及)魔界の存在・反面の覇王丸であり、
覇王丸を殺害すれば自分が反面ではなく真実の存在となれると確信(または妄信)して覇王丸の後を追うのだが
パラレルストーリーである剣サムを除いて、彼は肝心の覇王丸と接触することなくサムスピから姿を消している。
本来、魔物であり悪役である羅刹丸は、その目的(サムスピシリーズを代表する主人公級キャラであり、シリーズの牽引役でもある覇王丸の殺害)から言っても
ストーリー中でその末路がきちんと描かれなくてはならない筈だが、それが一切ない。
同じく、立ち位置としては魔物であり悪役として零に登場した妖怪腐れ外道は、
実の娘を喰らうという救いようのないエンディングを残して放置されたように見えるが
剣サムの真鏡名ミナストーリーモードで妖滅師であるミナに滅されたことが語られており(かつミナは外道が"肉親をも手にかけた"事を知っている)、
筆者(管理人)の推測……剣サムは零の翌年を描いた続編……が正しければ、
これでサムスピの時系列から消え初代に登場しない辻褄が合う。
しかし、羅刹丸は完全に宙に浮いているのである。
(ちなみに、零で登場した”魔物であり悪役”キャラは他に水邪と炎邪がいるが、
両者は最終的に封印され『アスラ斬魔伝』の風間兄弟の設定との辻褄合わせは成立している)
ここで、羅刹丸が零のエンディングで夢路に首を斬られた後魔物の強靭な生命力をもって復活し、
剣サムの夢路のストーリーモードで中ボス(四回戦の相手)として夢路の前に現れた、という点に注目してみよう。
再び敗れた羅刹丸は殺せと息巻きつつもなおも夢路を追うことを宣言しているが、それに対して夢路はこう返す。
「私を恨む限り貴方が他の方に害を為さないならば──結構なことです。」
剣サムの羅刹丸エンディングは、成立すれば後のサムスピのストーリーが破綻する類のエンディングなので
パラレルワールドのストーリーである、と判断できる。
一方夢路のストーリーモードが「零の正当な続編」であると仮定すると、その後羅刹丸は覇王丸を追うのを忘れるほどに、
まずは夢路を殺すことに執着しただろうと想像できるのである。
その結果、夢路と羅刹丸が共にサムスピの舞台に登場しなくなったという事実をもって何が推測できるだろうか。
両者の激突、そして相打ちである。
羅刹丸は覇王丸に手をかける事無く夢路に滅され、
夢路は羅刹丸の刀で致命傷を負い、その後父の死を知ることもなかった(できなかった)のではないか……と筆者(管理人)は考える。
こう推測すると、剣サムで行き着く先が不明だった両者が、その後共にサムスピの舞台から姿を消した理由の説明がつけられるのである。
だとすれば、黒河内夢路は親しい人々(生涯唯一の友右京や母の雪路)にすら末路を知られることなく逝ったという悲劇的なことになってしまうのだが、
果たしてそれを悲劇と断じていいものだろうか?
何故なら「何度も捨てようとしました。 何度もあきらめようとしました。それでも、私にはこれ(剣の道)しかないのです。」と言い切った夢路は、
もし羅刹丸と相打ちとなったのならば、斬首をもってしても死ななかった魔性の者を完全に滅するまでに剣を極めたのである。(括弧内は管理人が追加)
同時に殺戮しか頭にない羅刹丸によって引き起こされるであろう惨禍を、永遠に食い止めることも成し遂げた。
たとえ悲惨な最期だったとしても、夢路は己の剣に、己の生涯に満足したのではないだろうか。
親に勘当され疎外感を抱き、殺戮によって自らの心を傷つけ、忠誠を誓った我旺には先立たれ、
唯一の友(もしかして恋心を抱いていた?)橘右京には愛する女性が存在している。
運命に翻弄され続けた夢路は、捨てようとしても自分にはこれしかなかった、と語った剣をもって、己の生を全うした。
そう言えはしないだろうか。
※1 サムスピで初の中ボスキャラ(全プレイアブルキャラクターが必ず決まった順序で戦う特定のキャラ、という意味合いで)は
第三作『斬紅郎無双剣』の黒子だが(第二作『真サムライスピリッツ』では乱入キャラ)
プレイアブルキャラクターの同キャラに変身して挑んでくるので、事実上同キャラ戦である。
続く『天草降臨』は、闘う順序的には天草四郎時貞・壬無月斬紅郎が中ボスでキャラ別の「ライバルキャラ」がラスボスとなるが
天草と斬紅郎は第一と第三作のラスボス、言い換えれば”過去作の使い回し”である。
なおかつライバルキャラは全て既存キャラであり、ストーリーモードの最終目標として用意された新規キャラ=固定ラスボスではないため
一般的な中ボス・ラスボスとは言い難い。(シリーズもの格闘ゲームのラスボスキャラは新作ごとに新規で用意されているケースが多い)
サムスピシリーズ初の”一般的な”中ボス……とりあえずの定義としては
「ストーリーモードでラストボス直前などに登場する固定の敵キャラクター」で、ラストボスと設定上関係がある事が多い……は、
第五作目『侍魂』の木偶♂と木偶♀(壊帝ユガに製作された人造人間で側近)になる。
※2 歴代のサムスピで、最初から旧キャラと関係者だった新キャラの人数は、割合としては低い。
SNK時代は、初代『サムライスピリッツ』以後の2Dゲーム3作の完全新規キャラクター(ボス含む)12名中『真サムライスピリッツ』の牙神幻十郎と花諷院和狆(覇王丸の同門と師匠)・チャムチャム(タムタムの妹)・
『斬紅郎無双剣』の花諷院骸羅(和狆の弟子で孫代わり)・リムルル(ナコルルの妹、背景キャラクターから昇格)・壬無月斬紅郎(服部半蔵と旧知の仲)、
3Dゲームでは『甦りし蒼紅の刃』の命(色と反面のアスラの娘)・服部半蔵(先代半蔵の長男真蔵)・花房迅衛門(覇王丸の友人)となる。
プレイモア時代も夢路以外は、羅将神ミヅキと因縁のある設定を持つ機巧おちゃ麻呂くらいのものである。
※3 夢路の出奔が十五歳の時・ストーリーモードでの当人の述懐に寄れば、我旺と出逢ったのは零より三年前・
零の時点での夢路の年齢は公式プロフィールから(数え年で)十八歳と判断できるので、
我旺との出逢いは生家出奔からさほど日を置かずではないか、と推測できる。
※4 公式小説では、アルカディア発表の公式ストーリーでは省かれていた"夢路の刀に付着していた血"について
夢路が父左近に斬りかかり傷を負わせたという説明がある。罵倒の理由にはこれも含まれているのだろう。
※5 この齟齬の原因は、零のゲーム上のストーリーと公式小説では我旺と闇キ皇の交わり方が異なるためと思われる。
ゲーム上の我旺はプレイアブルキャラに1本取られた直後、「闇キ皇よ! 我が魂、存分に喰らえい!」と自らの意志で闇キ皇に身を委ねているが
公式小説では徳川慶寅との対決後、負傷した所を闇キ皇に一方的に憑依され鎧武者姿の魔物と化している。
個人的には袈裟懸けに斬られた重傷の人間でも憑代として不都合はないのか?と少々突っ込みたい気持ちはあるが……(笑)