牙神幻十郎 物語りまとめ


※初登場作はこの色

※続投作品はこの色

無色は出場していない作品

歴代公式プロフィール


リリース順 作品全体の物語 時系列 キャラクター別物語
サムライスピリッツ(初代)  暗黒神アンブロジァによって復活した天草四郎時貞の怨霊が引き起こした異変を鎮めるべく、十二人の剣士が島原へ向かう。 サムライスピリッツ零 (和狆に破門されて後?)山城の遊郭に気儘に滞在していた幻十郎は、ボロ布を被った謎の男に兇國日輪守我旺の暗殺を依頼される。

 エンディングで依頼者の正体は萬三九六だったことが明らかになる。
 斬ろうとする幻十郎の前に三九六の配下お二四が飛び出し庇い、幻十郎は三九六の銃で負傷してしまう。
 彼を介抱したのは覇王丸だった。幻十郎は怒りと殺意に打ち震える。
真サムライスピリッツ  アンブロジァに仕える魔界の巫女・羅将神ミヅキが甦った。十五人の剣士たちが、ミヅキの本拠地恐山へと向かう。 天下一剣客伝  ある男の依頼で浪人を斬り捨てた幻十郎は、依頼主が追剥行為に及んだのを見て彼も斬り捨てるが、その際浪人の持ち物だった半紙で御前仕合の開催を知り、覇王丸を殺すために参加する。

 エンディングで覇王丸と幻十郎は斬り結び、その死合が如何なる結末を迎えたかを知る者はないが
後に師である花諷院和狆は、地獄に覇王丸を呼ぶ幻十郎の声を聞いたと語ったと言う。
斬紅郎無双剣  「鬼」と呼ばれる無情にして強力の剣士・壬生月斬紅郎を斃すため、十二人の剣士が立ち上がる。 サムライスピリッツ(初代) 登場なし
天草降臨  天草四郎時貞が光(善)と闇(悪)に分裂し、闇の天草は島原に魔城を建立。十七人の剣士たちが島原へと向かう。 斬紅郎無双剣  何の感情も持たず「鬼」(壬無月斬紅郎)を斬り、巨額の報酬を受け取った幻十郎。
 彼の覇王丸を殺すという唯一の目的だけは変わることはなかった。(エンディング
侍魂(64)  人形師に身をやつす魔界のもの・壊帝ユガが復活。十一人の剣士たちがユガの元へと向かう。 天草降臨  気に入らぬ者を斬りながら覇王丸を追ううちに、幻十郎は島原の魔城に辿り着く。

 エンディングに不知火幻庵とアースクェイクが登場し、「あの方がお呼び」だと幻十郎を連れて行こうとするが、幻十郎は己の刃でそれを断ち、その後覇王丸と相対する。
アスラ斬魔伝  ユガの敵対者である魔界のもの・アスラが地上へ現われる。壊帝も再生し、十三人の剣士たちはユガを葬るため立ち上がる。 真サムライスピリッツ  覇王丸と同じく、和狆の弟子。腕は覇王丸よりも上であったが、あまりにも魂が暗黒に近かったため、和狆より破門を申し渡される。和狆、そして覇王丸に恨みを持った彼も、魔物に魅入られ、その下僕となった。
 気に入らないヤツをすべて斬って捨てたあとは、魔物自体もすべて斬り殺そうと考えている。

 エンディングで手負いの覇王丸の前に現れ、殺そうとする幻十郎だが
覇王丸の前に立ち塞がる元許嫁の脇坂静に免じてその場は見逃す。
 一人さすらう幻十郎の後を、一匹の小さな金色の蛙が追っていく。
甦りし蒼紅の刃  二十年後。江戸近海の小島に存在する「離天京」を支配する覇業三刃衆を倒すべく、様々な立場の剣士たちが三刃衆の居城「天幻城」へと向かう。 侍魂(64)  宿敵・覇王丸を倒すべく、彼を追っていた幻十郎。ところが、あともう一歩というところで邪魔が入る。立ちはだかる異形の輩を斬るうち、幻十郎の中の野獣が牙をむく。

 エンディングで色と出会ってしまった幻十郎は、牙をむく意思を失い一人さすらうが"真っ赤な鬼"斬紅郎と出会い再び牙を剥き鬼を斬る。

なお公式年表においては、幻十郎はユガの側近木偶♂・♀を倒すのに一役買ったようである。
サムライスピリッツ零  初代の二年前。幕府に反旗を翻した武将・兇國日輪守我旺は魔界のもの”闇キ皇”にとり憑かれた。引き起こされる異変を鎮めるべく、二十四人の剣士たちが戦の場・黄泉が原へと向かう。 アスラ斬魔伝  エンディングで、覇王丸との果たし合いの最中にかつて殺した男の幼い息子に背を刺され、致命傷を追った幻十郎。
 肩を貸す覇王丸に対し、刀を抜き眉間に突き付け迫る幻十郎だが、覇王丸を睨みつけたまま"二度と動くことはなかった"。参照
天下一剣客伝  本編の時間軸とは関係しないパラレルストーリーであり、エンディングは基本的に登場キャラクターの望みを叶えたものとなっている。
枠組みとしては、零の主人公徳川慶寅が主催する御前試合に四十一人の剣客たちが集うとなっている。
サムライスピリッツ閃  ある夜道で刺客数人に襲われ、返り討ちにした幻十郎。
 うちその場での死を免れた一人にゴルバの事を聞いた幻十郎は、ゴルバを斬るため争いの渦中に身を投じる。

 エンディングで遊郭に赴き遊女と戯れる幻十郎はある一党の襲撃を受ける。
 ほぼ斬り捨てた時に足を滑らせ、最後の一人に斬られそうになった幻十郎は傍らの遊女を身代わりに投げつけ、二人諸共斬り捨てる。
 「何人たりとも殺せるものか、この俺を」
サムライスピリッツ閃  アスラ斬魔伝の結末の幾つかを無効にした翌年の出来事。
レスフィーア王国出身の軍人ゴルバが、祖国の再建のため日本は天降藩の鈴姫と前国王の形見のバスタードソードを狙って日本に刺客を差し向ける。ゴルバの陰謀に巻き込まれた剣士たちは彼の居城を目指す。
甦りし蒼紅の刃 登場なし
覇王丸のエンディングで、覇王丸が幻十郎に対して語りかけるシーンがある。)



概要

サムライスピリッツ(以下サムスピ)シリーズ二作目となる『真サムライスピリッツ』(以下真サム)で登場した、四人の新キャラクターの一人・牙神幻十郎は

真サム新キャラ中唯一、タイトル通りにサムライ"的な"雰囲気を持ち、かつその後唯一定着したキャラクターである。

旧SNK時代は初代『サムライスピリッツ』と『甦りし蒼紅の刃』(以下蒼紅)を除く全作品に出演、

プレイモア時代のリリース作品では皆勤賞と、紛れもなくサムスピを代表するキャラの一人と言えるだろう。

幻十郎は生い立ちから死までの具体的なエピソードが公式発行誌を含めた作品中のストーリーで表されており、

さらには僅かながら祖先に至るまで言及があるという、サムスピではかなり珍しいキャラクターである。

つまりはサムスピのストーリー中で、彼の一生そのものが描き切られた、と言っても過言ではない。 



宝暦十年(1760年)、山城(現在の京都)で生まれた幻十郎は父親を知らず、精神的に不安定な母親は気分次第で幻十郎を可愛がるか突き放し、

常に男を連れ込んでいた。

幼い幻十郎は母とその情夫(家に居着き幻十郎に暴力をふるっていた浪人)を情夫の刀で斬殺し、

その際母に斬りつけられ、背中に生涯残る大きな刀傷を負う。

長じた幻十郎は酒と博打と遊郭通いに日を過ごし、気が向けば巨額の報酬で殺人を請け負う生き方をするようになっていた。


覇王丸より先に花諷院和狆に弟子入りしており、その剣が暗黒面に近すぎるとして和狆に破門されているが

弟子入りの経緯は不明である。

人斬りの"仕事"はどうやら破門されて後に始めたと思われ、真サムの幻十郎ストーリー脚注(※1)によると"破門されてから

幻十郎が斬った人の数は2百人は超える"という。

これについては、真サムの覇王丸ストーリーで無頼の輩と斬り合っている描写があるので、

"仕事"以外にもそういった斬り合いで殺害した人数も含めているのではないだろうか?


人の世の暗黒面を体現するかのような生き方と思考を持つ幻十郎は、刀の来歴や祖先(祖父母)についての言及にさえも

おぞましく禍々しい要素をまとわりつかせている。

彼の刀梅鶯毒について、ポリゴン第一作『侍魂』(以下ポリサム)で語られた由来によれば

鎌倉時代の名匠國徳が生涯最高の刀として鍛え上げたが、

國徳は発狂し、梅鶯毒を抱きかかえ死臭としゃれこうべの山に囲まれていたそうである。

彼の祖父母についての言及は、真サムの幻十郎ストーリー脚注(※3)にある。

それによると、ある屋敷で発見された首のない男と契る女から幻十郎の母が産まれたという。



初登場の真サムでは魔物の首領である羅将神ミヅキの元につき、その障害となる者たちを斬り捨てて行くが

幻十郎にとっては魔物もミヅキも、同じように斬り捨てる対象でしかない。

そのような、ある意味で善も悪も超越した存在でありながら、各作品での幻十郎のストーリーを見て行くとあることに気付く。


彼は同門の弟弟子である覇王丸を極度に憎み目の敵にし、殆どの作品で覇王丸を殺害することを目標としているが

真サムではその格好の機会を脇坂静の登場で断念している。

覇王丸の殺害という目標に関しても、『アスラ斬魔伝』(以下アスラ)のエンディングで相対するまでに

『天草降臨』(以下天サム)でも一度機会があったはずなのだが、果たして痛み分けとなったのかどうか、

天サム→真サム→ポリサム→アスラまでの約二年間の間放置しているのである。

これについては単にうまい具合に覇王丸と幻十郎が出会う機会がなかっただけ、という可能性も考えられるが

つまり幻十郎は積極的に(または執拗に)覇王丸を探し歩かなかった、とも言える。


また目を転じれば、『サムライスピリッツ零』では三九六を斬り捨てるのを彼を庇った女性の配下・お二四のために中断し(たように見え)たり、

ポリサムでは色に出会ったことで覇王丸を殺害することすら放棄しているのだ。


人を殺す事を何とも思わぬ危険な男という設定であり、事実その通りに殺害を重ね屍の山を築く幻十郎だが、

ストーリーの本筋ではむしろその危険な本性を発揮している方が稀である。


共通するのは、彼が殺害を断念する場合にはそこに女性の介入があること(脇坂静・お二四・色)である。

何故なのか。推測にすぎないが、彼が最初に犯した殺人の犠牲者である実の母に対する負い目が、

未だ幻十郎にある故に……ではないだろうか。

覇王丸の殺害についても、もしそれを幻十郎が成し遂げてしまえばサムスピの物語の軸が大幅に狂ってしまうという事情があるのと同時に(笑)

幻十郎がこの世で唯一執着する存在・覇王丸を消してしまえば彼がこの世に執着するものが皆無となる、

それを無意識に回避しているのではないか、
とすら思える。



関連キャラクター


父親は不明。母親は幻十郎自身がその情夫と同時に手に掛けている。

剣術の師が花諷院和狆、覇王丸は弟弟子に当たる。

天サムではナコルル・リムルル姉妹のライバルキャラになっている。

ナコルルについては「自然の声とやらが聞こえるか?」という程度には知っているようである。

萬三九六は幻十郎を利用する目的で兇國日輪守我旺殺害を依頼しているが、

幻十郎に斬られそうになった際、彼の父母に関して詳細を知っているような発言をしている。

幻十郎の生年には、三九六は8〜9歳だったと推測されるので

本当なのか出鱈目なのか、どちらとも判断できない(いずれにしてもその件についてそれ以上語られた事はない)。

不知火幻庵とアースクェイクは羅将神ミヅキに与する者同士という点で一味になるはずだが、幻十郎はまったくそう思っていない。

色は覇王丸以外で幻十郎が唯一気に掛けた者であることがポリサムのエンディングで言及されているが、

続編のアスラ斬魔伝で、その件に関して触れた記述は双方のキャラにない。

色は後に反面のアスラと相思相愛となり、一女命(みこと)を儲ける。



サムライスピリッツ閃での幻十郎


アスラの翌年を舞台にした現時点でのサムスピ最終作・『サムライスピリッツ閃』(以下閃)はいくつかの矛盾を抱えている。

アスラと続編の蒼紅で確定した事柄が無効化された、または無視されたキャラが数人存在している点である。

具体的には、二十年後にそれぞれ聖霊化・コールドスリープ(冷凍睡眠)されているはずの

ナコルル・リムルル姉妹が普通に年を重ね二十歳と十七歳になっていたり、

アスラのエンディングで死亡したとされている橘右京が生存していたりする。

しかしこじつければ、ナコルル姉妹が蒼紅に出なくなっても話の大筋には殆ど影響がない

(ただし漫画版の蒼紅では姉妹の役割は重要になって来るため影響は出るが)、

右京もアスラのエンディングで死亡したと明言されてはいない、と無理矢理にでも一応解釈できるが

牙神幻十郎については、エンディングの後日譚である『剣客風説草紙・一之回』の最後の一節……

「覇王丸を睨み付けたまま、幻十郎は二度と動かなかった。」

普通に解釈すれば、死亡したとしか取れない表現になっている。

にも関わらず、何事もなかったかのように幻十郎はプレイアブルキャラクターとして平然と閃に登場し

これまでの彼のストーリーを知る者に首を傾げさせることになる。

ところがここでの幻十郎のストーリーを追えば、過去の幻十郎を構成していた重要な要素がはっきりと消滅している。



まずは彼が執着した唯一の人間である覇王丸の存在が、オープニングからエンディングに至るまでまったく見受けられない。

(覇王丸に対する特殊台詞は存在しているが)

つまり幻十郎をこの"くだらぬ世の中"に結び付けてきた最大にして唯一の要素が、

幻十郎の周囲、乃至は彼の内部にもう存在しないのである。

そして閃のエンディングでは、これまで女性に対しては情を持っていた(ようにも取れる態度を見せてきた)幻十郎が

襲い来る刺客の前に共にいた遊女を投げ出し身代わりにする、という非情の行動に出る。

要は、これまでの幻十郎のストーリーとはまったく逆の展開を見せている。

閃のエンディング最後の幻十郎の台詞「何人たりとも殺せるものか、この俺を」は、アスラでのエンディングを否定しているようにも思える。



幻十郎の姓・牙神=牙を持つ神はどことはなく鬼のイメージを喚起させ、

彼のステージBGM=テーマ曲も代々「鬼唄」と名付けられ、

その生まれや武器にも異形の影を纏わせ、常に死と殺しと共にある幻十郎は、

壬無月斬紅郎が登場するまでのサムスピで最も"鬼"に近い存在であった。

そんな顔と生まれを持ちながらも、覇王丸と母によって?人間であった幻十郎は

アスラでの死・そして閃での"復活"を経て、鬼・修羅・非情の要素のみを残して甦った……と言えるのではないだろうか。


閃以降サムスピの格闘ゲームとしての続編はないのだが、もしも閃に続編があれば、果たして幻十郎は"鬼"のままだったのか、

もしくは蒼紅のエンディングで覇王丸が呟いた回顧の流れに復帰したのか。

「あやつ自身が変わらねば、この先ずっと修羅道を歩むことになるじゃろう」と、真サムで彼の師である花諷院和狆は言ったが、

幻十郎は果たしてどこに向かうことになったのだろうか。



『ALL ABOUT真サムライスピリッツ覇王丸地獄変 上巻・しすてむ解析編』P96より
牙神幻十郎オープニングストーリー


『侍魂〜サムライスピリッツ〜完全攻略マニュアル』ネオジオフリーク編集部責任編集 1998年発行

「キャラクター紹介」P22 牙神幻十郎の項より




※ナコルルの聖霊化・リムルルの封印は閃の事件の後に起こったという意見もあるようだが

公式で年代が確定されるなどの情報が手元にないため不確定とせざるを得ない。

SNK時代の公式発行冊子(侍組のメールマガジンなど)で確定されている記述があるなどの

情報をお持ちの方は、鳥獣GIGA管理人までお願いします。



    

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